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――――8月。 容赦のない陽光が人々の頭を照らす季節。 しかし、その熱も太陽が沈むと影を潜め日中に溜まった熱のみが、空気を暖めていた。 そんな生温い空気の中にあるブランコとベンチしかない公園に一人の青年が座りこんでいた。 街灯ひとつだけが照らす公園は、周りの景色の中に闇と化して溶け込んでいた。 その公園の前を時たま早足にサラリーマンのような人が、学生服を着た人が、犬を連れた老人が、通りすぎていった。 ―――誰も闇に沈んだ公園の一角に座り込んだ青年に気づかない。 ………タ、タ、タタと足音が響いてくる。 また一人公園の前を通り過ぎようとしていた。 ―――――ザァッ―― 突如強い風が吹き、辺りの空気を動かした。 公園を通り過ぎようとしていた少年は、わずかに目を細め足を止めた。 少年は再び目を開け、その場を後にしようとした。 が、少年の目は何かに吸い込まれるように闇に沈む公園にむいた。 少年は一時いぶかしむように公園の一角にある黒い塊を見つめていたが、それが何であるかを理解するとその塊に駆け寄り、一声かけた。 「大丈夫ですか?」 ―――――。 これが始まり。 ある二人を中心に廻るある物語の引き金。  
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