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――城門前。
月の光が頂点にくる頃、城には地鳴りが響いていた。
俺は、城門の最前線で魔族を待ち構える。
眼前には、民たちが避難して空になった城下町が広がり、昨日までの華やかさの面影もない。
これからこの家々を盾にして、魔族の進行を少しでも食い止める……苦肉の策だ。
しかし……なんて数なんだ。数えるなんてレベルじゃないぞ……見渡す限り真っ黒じゃないか。
満月に照らされた魔族の軍勢は、視界一杯にうごめいている。百万か二百万か、想像もつかない数だ。
くそっ、五千にも満たない迎撃部隊が、この数の魔族と戦っていたのか……。
ここの軍勢は、およそ三万……それでも、とてもじゃないが多勢に無勢すぎる。
俺は気を引き締め直し、兵士たちに作戦を告げた。
「貴様ら、ギリギリまで引きつけろ! 俺が合図をしたら、全力でぶっ放せ! 補属性呪文で魔防壁もしっかり張っとけよ! 奴らの先手は攻撃呪文だ!」
補属性呪文ってのは力の弱い人間が得意とする”防御に特化した呪文”だ。これまでも魔族の攻撃呪文もある程度は防いできた。
当然、魔族も補属性呪文は使えるが、この属性だけは人間の方が上手く使える。
ーー「はっ、お任せ下さい!」
兵士たちが威勢よく声を揃える。
へっ、こいつら。こんな状況だってのに……頼もしい奴らだ。
こうなったら、ミズナが呪文を使うまで時間を稼ぐしかない……。
作戦はこうだ。
まず、補属性呪文で魔防壁を張って、魔族の攻撃呪文を防ぐ。弱い人間が必死に鍛えた呪文でな。
そのあとは……闘気を込めた俺たちの剣術でやってやる。
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