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次第に地鳴りと砂ぼこりが近づくと、魔族の奇声が聞こえてくる。
――タイミングが全てだ。早すぎると威力は分散し、遅すぎると大軍に飲み込まれる。
ここから魔族までの距離は、およそ三百メートル……。
俺は、背中の鞘から剣を一刀抜いた。
この剣は、通常の倍の長さがある。
長身の俺に合わせた特注品だ。
「魔族ども、早く来い! 面白いものを見せてやるぞ!」
――凄まじい勢いで距離が縮まる。
肩には力が入り、短く荒い息が心臓の鼓動を早くする。
……二百。
……百五十。
……百二十、百十、百。
いまだ!
俺は剣を空に突き上げ、刀身に闘気を流した。
「これがルシアン流剣術……蒼波斬だ!」
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