598人が本棚に入れています
本棚に追加
こちら側の親戚も、「朝鮮人なんか、とんでもない!お金に汚く、穢らわしい!」という調子だった。
彼女に駆け落ちを提案したが、「親は捨てられない。皆を説得しましょう。」と首を横に振るばかり。
結局4ヶ月何も進展しないまま、心が折れてしまった僕は全てを投げ出してしまった。
彼女に、僕は力の無い笑顔で別れを切り出した。
彼女はただ泣きながら、「ごめんなさい」を繰り返すばかり。
そして怒りの矛先は、自分の母親に向けた。
転勤が決まり、勤務先を告げずに家を出た。
そして母に一年以上連絡を入れなかった。
だから母は富岡裕一からの結婚式の招待状も転送出来ず、困ったという。
そしてつい2ヶ月前の7月に、叔母2人の騙し討ちのようなセッティングで、仲直りしたばかりだった。
最初は拒絶しようとしたが、弱々しい声で僕に詫びる母を見て許さざるを得なかった。
人一倍強情で、人に頭を下げる事が大嫌いなプライドの高い母が、息子に頭を下げる。
僕にとっては衝撃的な光景だった。
内心僕は思った。
いつもの母なら、「それは喜代美さんが悪いよ。他人がとやかく口を出せるような話じゃないね。」と言うはずが、『親子の縁を切る』という言葉を聞いて、つい自分と重なったのだと思う。
それにしても、おばさんも嫁さんに対して事あるごとに『邪教の女』と罵っていたのは不味い。
元々創価学会は、『日蓮正宗』の教えを基にしていて排他的、他の宗教を『邪教』と決め付けている。
僕も創価大学時代によく自慢気に聞かされたが、『創価学会は他の宗教に論戦を挑み、尽く破折(理で相手を破った)した』というくらい激しい。
ただ内実は、古くからの宗教は元々摩擦を起こさずの精神で、ただただ創価学会側の傍若無人さに呆れ果てて、口を閉ざしていたらしい。
それだけではない、論戦に負けても『勝った』事にしているケースもある。
ただ母から話を聞いているうちに、どうも息子の嫁さんに対しての嫉妬が宗教と結び付き、最悪の結果をもたらしたように思えた。
母に話を向けると、「やっぱりアンタもそう思う?」と言ってきた。
最後に母は、「裕一君から話を聞いてくれない?」と言った。
僕も他県に住んでいるので、簡単に時間は作れない。
最初のコメントを投稿しよう!