裕一の気持ち

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 何も言えなかった。  いや、何を言っても、安っぽい言葉にしか聞こえない雰囲気だった。    ただただ思い出すのは、子供の頃にとても仲が良かった裕一と喜代美おばさんの姿ばかり。    暫くの間、裕一は子供みたいに泣きじゃくっていた。  他に客は居らず、従業員達は淡々と自分の仕事をこなしていた。  裕一の中の激情の嵐が過ぎ去ると、裕一はポツリと言った。  「晶真、今度家に来いよ。幸恵にも会わせたいしさ。」  「そうか。今度寄らせて貰うよ。ところで奥さんの好物は何だい?」  「ケーキかな…、特にチーズケーキだな。」    裕一をタクシーで送り出した後、自分のタクシーを待つ間、僕は西の空の月を睨み付けていた。  「何が人間の境涯が高まるだよ、創価学会!不幸を撒き散らしやがって!!」  胸に沸騰した怒りが込み上げてくる。  大学時代に経験した嫌な思い出が甦ってくる。  その時、本田妙の顔が浮かんできた。  高校は別だったが、創価大学では一緒だった。  もっとも創価大学では異分子である事を自覚していたので、妙には学内とか人目につくところでは、僕に近付かないよう言い聞かせていた。  特に創価大女子に嫌われ、目を付けられていたからだ。  何しろアダ名は『謗法大師』だったから。
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