本田妙

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 僕の家は一つの敷地に祖母の家と離れというかたちで母の家があった。  祖父は僕が小学校3年生の春に病死、父は僕が幼稚園の時に離婚していなかった。  祖母の家にはまだ嫁入り前の叔母2人が居て、食事はわりと賑やかだった。    母は遠慮する妙を風呂に入れると富士大石寺の電話番号を調べ、電話をかけていた。  しかし上手く連絡が行き届かず、妙の両親にはつながらなかったようだ。  その間、祖母と叔母2人と一緒に食事の準備をしていた。  そして妙が風呂から上がると、食事が始まった。  僕と妙はその間一切言葉を交わさないどころか、視線も合わさない始末だった。  祖母も含めて、僕と妙の様子がただならない事に気付いていた。  食事が終わると僕は母に、「ちょっと話があるから。」と少し低い声で言われた。  声の調子で、良からぬ件で話がある事は直ぐに分かった。  嫌な気持ちで別室に入ると、母と下の叔母が硬い表情で僕を待っていた。  「アンタ、妙ちゃんに何をしたの?」  「…別に…。」  「何でも無かったら、妙ちゃんあんな顔しないよね?」  今度は叔母が僕の目を覗き込む。  僕は仕方無しに、自分に都合の悪い部分をはしょりながら話した。  「アンタの話、大事な部分が抜けているよね!?お母さんの事、誤魔化せると思っているの!?」  詰問口調になり、これ以上隠せなくなって全部を話した。
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