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「おーい、そこの人魚!………オルカ! おい、オルカ!」
いつも漁師と取り引きする少し手前で、4,5人の男達に呼び止められた。
「なんだよ?」
「あーやっぱあんたがオルカか。売りに来たんだろ? 捕った魚、ちょっと見してみろ。」
「なんでだよ?」
「いいから見せろや。」
なんだこいつら突然…。でも、人間ともめ事起こすと面倒だしな…。俺は黙って差し出すことにした。
「小魚と貝か…。しけてんな」
「でも兄貴、この魚とかこの貝とか、けっこう…」
「うるせぇ!! 黙ってろ! 人魚ならも少しましなもん捕ってこいっての! 仕方ねぇな、全部で二〇円で引き取ってやるよ。」
二〇円!? なに言ってんだコイツ!? これだけの魚、そんな値段で売れるわけがない!
「ふざけるなよ! 売れるわけないだろ?」
「うるせぇよ! てめぇら人外に金出してやるだけ、ありがたいと思え!」
こいつら、人魚を家畜と同程度にしか見てない連中だ! 向こうは人数も多いし、力で人間には敵わない。けどこのままじゃ、せっかく捕ってきた魚がとられちまう!
そう思ったら、とっさに体が動いた。海水と一緒に、海藻を顔面めがけて投げつけ、陸地に飛びあがり網を奪い取ると、死に物狂いで海へと戻った。
戻る時、尾ビレをつかまれたが、ヒレですべったのが幸いして、何とか逃げおおせた。人魚が陸へ上がれないと思って、油断したみたいだ。
「おい、こら! 人魚! 顔も名前も割れてんだ! ただで済むと思うなよ!」
男たちの怒鳴り声が聞こえてきたが、知ったことか!
深く潜ったまま、目的の港まで全力で泳いだ。海に生きる人間以外は、やっぱりろくな奴らじゃねぇ!
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