崩壊の序曲

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それを察したように拓海が俺にフォローしてくれた。 「実は店出た後師範にメール送ったんだよ。『竜一が彼女のことで悩んでるんで、喝入れてやってください』ってな」 「いつの間に…」 「ま、そゆわけだ。ほら二人ともさっさと上がれや」 師範に言われ、俺たちは家に上がった。 この家にもよく来た。 練習のあとによくソフィーさんの手料理をよばれた。 怪我したらここでソフィーさんが看てくれた。 道場では辛いことが多かったが、この家では楽しいことばかりだった。 「久しぶりだなぁ」 広い和室へ入ると拓海が言った。 「昔はよくここで宴会したなぁ」 「今でもやってるんですか?」 拓海が聞き返すと、師範はニカッと笑って頷いた。 「当たり前だろうっ。門下生集めて騒ぎまくりよっ」 「ははは、変わってませんねぇ」 二人の会話内容は嬉しいものだ。 ここは何も変わってない。 昔のままだ。 それが俺は嬉しかった。
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