二人の答え

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「俺もお前が好きだよ・・・」 「だったら今まで通りにいようよ・・・。お願い・・・」 今にも泣き出しそうな貴子の声。 涙を必死にこらえようとしている貴子の表情。 そんな表情を見てるのが辛い。 自分がさせているのに・・・。 自分勝手だ・・・。 でも、もう決めたこと。 「ごめん・・・。やっぱりお前と一緒にいること、俺には無理だ・・・」 貴子は目を見開いて俺を見上げる。 でもすぐに涙を隠すように俯いた。 その時間が何秒続いただろう・・・。 俺には数分にも感じられた。 そして貴子が小さく呟いた。 「そ・・っか・・。ごめんね、辛い・・・思いさせちゃって・・・」 必死に笑って俺に謝る貴子。 何でお前が謝るんだよ・・・。 何で俺はこうなんだよ・・・。 自分自身が・・・俺そのものが嫌になる・・・。 「俺こそすまなかった・・・。せめて、お前の幸せだけは願ってる」 「私も・・・」 その後お互い無言でただ立っていただけだ。 そして。 「じゃ・・・俺行くな」 「あ・・・」 立ち去ろうとする俺に小さく声をもらす貴子。 「ん?」 「う、ううん。その・・・元気で」 「貴子も」 貴子は必死な笑顔で俺に手を振ってくれた。 俺はこんなにも冷たいのに・・・。 あんなに傷つけたのに・・・。 俺はすぐにでもこの場から消えたかった。 いや、逃げたかったんだろうな。 俺は立ち止まらず、振り返りもせず公園を立ち去った。
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