幸せの場所

2/17

315人が本棚に入れています
本棚に追加
/427ページ
竜一side 貴子と別れて八ヶ月。 春が過ぎ、夏が過ぎ、日本には再び冬が訪れた。 夏は何もないまま、ただただ生きてただけ。 拓海や椋も本格的に忙しくなり、俺は本当にただ生きてるだけの状態になっていたのだ。 そして冬。 クリスマスも近づいているということで、街はクリスマス仕様になっている。 木には電飾が灯され、街を歩けばクリスマスを知らせるポスターで溢れかえっている。 クリスマス。 決められているわけでもないというのに、その日はもはや恋人同士の日となっている。 今まで興味もなかった日だというのに、今年はやけに意識してしまう。 「くそっ・・・いつまで・・・」 ツリーを見上げながら、俺は自分に向けて呟いた。 自分でもこんなに未練たらしいとは思わなかった。 別れたらすぐ冷めると、そう思っていた。 しかし、想いなど何も変わっていなかった。 時間を空けて、自分がどれだけ貴子を好いていたか。 でも、もう何もかもが遅い。
/427ページ

最初のコメントを投稿しよう!

315人が本棚に入れています
本棚に追加