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ザァァァァー……
パチャ……パチャ……
光琉は1人、雨の中を傘をささずに歩く……。
(本当にバカだよね私……トリップ小説みたく、そんな上手くいく訳ないじゃん……。
小説のヒロインみたく可愛い訳でも、美人な訳でもないし……。)
雨に濡れるのも気にせず歩き、心の中で呟く光琉。
ザァァァァー……
(普通トリップ小説なら、キャラが一目惚れとかして、異次元から来たって言っても……問題無く受け入れてくれるのにね……。)
歩いていると目の前に公園が見えた。
自然とそちらに足が向いていた……。
ザァァァァー……
「こんな雨の日に、人なんかいる訳ないよね……。」
呟いて苦笑を浮かべ公園に入っていく。
「本当に……バカみたい……。泣けてくるよ……。」
公園の真ん中まで歩いていき、雨の空を見上げそう呟く。
ザァァァァー……
─────
ザァァァァー……
パシャッパシャッパシャッ…
光琉が雨空を見上げていると、
誰かの足音が聞こえてきた。
そして視界が蒼い何かに遮られ、視線を横にずらすと、それは蒼い傘だった。
「おいアンタ、こんな雨の中…何してんだよ?新手の宗教か何かか?」
視線を更に横にずらすと、光琉が良く知っている顔があった……。
(!!この人は……跡部…景吾……。)
そう。皮肉な事に手塚国光のライバル、氷帝の跡部景吾が立っていた……。
有り得ない位の偶然に、しばし驚いて目を見開いていたが、思わず苦笑を浮かべる光琉。
「何が可笑しいんだよ……?」
突然の苦笑に、少し眉を顰め不愉快そうな顔をする跡部。
そんな跡部を見て、申し訳なさそうに
苦笑まじりで
「ごめんなさいね、なんでもないの。
気にしないで、それじゃあ。」
跡部に向かって微笑み言ってツカツカと歩き出す光琉。
(今は、テニプリキャラとは関わり合いたくない…。ごめんね、跡部景吾君……。)
パシッ
「……えっ?」
不意に何かに引かれる感覚。
振り返ると跡部が手をしっかり掴んで光琉を射るような瞳で見詰めていた。
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