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―綺麗だ―
満月の月光が、銀色の髪にあたり妖艶に輝いている。
そしてその双眸で、黒き虚空を見上げていた。
「…土方?」
こちらの人影に気づき、アパートの階段に座っている銀時はゆっくりと土方を見据えた。
「何やってんだ?」
土方はいつもと違う雰囲気を醸し出す銀時から目を逸らし、銀時の元へと近づいた。
「いや…これでよかったのかなって…。」
土方は階段近くの壁に、体重を預けて今度は逸らさず、鋭い目で見つめる。
「…大丈夫だ。」
一瞬戸惑った表情を見せ、タバコに火わつける手が止まったが、いつもの冷静な顔に戻し、タバコに火をつけた。
「でも…最良の選択をとれなかったんじゃないかって思う。本当に金を借りる選択肢で良かったのかなって。やっぱり俺が店長より、ヅラや高杉の方が良かった「自分を責めるなよ。」
土方は聞いてられないといいたげに、タバコの煙を吐き出し、銀時と同じ目線になるようにしゃがみこんだ。
「お前が最良と思ったんだったらそれが最良なんだ。お前は桂や高杉には持っていない誠実な心や、臆することのない、何よりその前向きな気持ちがあるだろ?」
土方は口角を上げ、ニヤリと笑うと銀時の額を小突いた。
「って…!」
「だから図太い神経の癖にこんな所で悩んでんじゃねぇよ、バーカ。」
土方は優しげに、そして幼児のように無邪気に微笑んだ。
「ああ…サンキュー。土方。」
銀時も不器用なりに、励ましてくれているのだとしれば、暗い表情を一変して微笑を浮かべた。
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