爺、転生

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真っ白い場所に老夫は居た、彼の名は金井茂徳(かないしげのり)、御歳九十二歳である。 「ここはどこだ?」 方向感覚や精神が狂いそうな、天地の境界が曖昧な真っ白い場所で、茂徳は周囲を見渡して呟く。 そんな時に、誰も居なかったはずの後ろから声が聞こえた。 「ここはあの世とこの世の境界だよ、シゲちゃん」 その声に聞き覚えがあり、振り向くと、そこには懐かしい顔があった。 「ゲンちゃんじゃないか久しぶりだな、と言うことは儂は死んだのか」 振り向いた先には男が居た。 名は勝島源次(かつしまげんじ)、茂徳の同年代の友であり、早くに亡くなっていた、享年三十一歳であった。 「ああ、死んだよ、死因は転落死、寝起きの時に階段から足を踏み外して落ちたんだね」 「そうか、儂は死んだのか、これからどうなるんだ?」 死因を伝える源次、茂徳は少し考えた後、自分のこれからを問う。 「本当なら、人それぞれのあの世に行った後、生まれ変わるんだけど、シゲちゃんには異世界に行ってもらいたいんだ」 「異世界?」 疑問符を浮かべる茂徳を見て源次は続ける。
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