きっかけ

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大学卒業後に新卒で入社して5年目。 仕事内容と人間関係に不満は無く、むしろ良い環境で働かせてもらっている。 恋よりも仕事の方が楽しくて気付けば28になろうするところだけど、結婚の「け」の字どころか彼氏の「か」の字すら出て来る事の無い娘の様子を心配した両親が度々縁談を持ち掛けるようになって早3年。 毎度「NO」と即答する度にしょんぼりする父が不憫に思えるようになり、さすがに断り続けるはマズいから「とりあえず会ってから断る」作戦にシフトしようという変な余裕も出てきた。 「いいよ。まず、会ってみる。」 まぁ…会った後で断るけどね。 お父さんの顔も立ててあげないと。 「解ったよ。いつも通りことわ…」 いつもの「お見合いしない?」「だが断る」のやり取りとは違った返事に父が目を見開いて目をうるうるさせている。 父よ…そんなに嬉しいのか。 「ほ、ほほほ本当か!?」 本当に会うだけだから。 何故噛む。最初から「YES」の返事を期待しないで話を持ち掛けないでよ。 …って、私がそうさせちゃったんだけど。 「本当だよ。会ってみてもいいかな、って思ったの。」
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