LOST

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それは「君」に辿り着く前の物語 「君」に辿り着く為の「僕」の物語 いつか「君」に送る「君」のための物語 あの紅い戦場で喪われた半身の記憶は私の中で消えかけては甦ることをくりかえしていた。私の心はすでに壊れていたのだろう。あのなにもない部屋に自分ごとすべてを閉じこめてしまおうと思った時から・・・ 神の戦士を名乗る一団が私を訪ねてきたのは偶然だったが私にとっては幸運なことだった 彼らが私の第二の故郷となっていたファタムーン王国にやってきたのはあの悲劇の紅い戦場が起こってからすでに五年の年月がたっていた夏の終わりのことだった 「ユーグさん、私たちにはあなたのようなかたが必要なのです」 彼らのリーダーだと名乗った少女は私にそう言った すべてを失ったあの日、私は人の理からはずれたのだという。だが、同時にそれは同じように理からはずれたものたちにとっての力であり脅威でもある存在になったということなのだと彼女は私に伝えた 私は危うい存在なのだと彼女はいった このまま私があの悲劇の記憶を捨て去ろうとせず心を闇に染めたままならば私は本当の脅威になるのだという。彼女は数少ない仲間になるであろう私を始末したくはないといった。けれど、私はあの悲劇をなかったことにしたくはなかった。 たとえ霞の彼方にあろうと私の喪われた半身は確かにいたのだという証が欲しかったのだ。 そんな私に彼女は告げた。 人の道は一つではなくいつかどこか別の形で再び巡り会うこともあるのだと 結果、私は彼女の言葉を信じ彼らの手を取り旅立ったのだった。 思い出すのは微かな面影・・・ 「君」のいないこの世界で「僕」の生に意味があるのならこの世界は決して「嘘」ではない、紛れもない「現実」
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