序章

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────きっかけは些細なこと。 遡ること十日ほど前。 一人の男が何の気なしに口にした言葉こそが発端だった。 「いや、秋のGIラッシュ始まったな」 「うん、ローレルゲレイロ強かった。キングヘイロー産駒だし、これからも頑張ってほしい」 「けど、今年はどの路線も軸になる馬がいるから予想が立てやすくて助かるな。手堅くいけば負けることなさそうだし」 「……はい?今あなた、なんて言いました?」 「いや、だからGI始まったなって……」 「その後だよ。なんかさ、手堅くいけば負けはしないみたいなこと言わなかった?」 「言ったけど?」 「は!何を言うかと思えば!大本命がいるからこそ穴馬がうまくなるんじゃん。普通にきそうな馬買ってもつまんないし。あえて本命を外して、配当うまうま作戦というのはどうだろう?」 「うわ、また夢見がちなこと言い出したよ」 「ふん、夢を追って何が悪い。万馬券はすべての競馬ファンの憧れなのだ」 「はいはい、そういうことは当ててから言ってくださいね夢想家さん。俺は現実見て生きてるから。まあなんだろう?一言言わせてもらえるなら、寝言は寝て言えってなもんですよ」 「わー、やなやつー。穴党に言ってはいけないことを平然とまあ……一応訊いとくけど、その言葉取り消す気はないな?」 「ないよ?」 「────ならば是非もなし。これ以上なくわかりやすい形で、お互いの信念の優劣を競うしかないな」 「ほう?やる気か?万年収支マイナスの穴党風情が」 「ふん、今の内に大口叩いてろ。この夢を失った利益の亡者め。最後に笑うのは俺だ。てめえの敗因はたった一つ……たった一つのシンプルな答えだ。その答えは……“てめえは俺を怒らせた!”」 「や、敗因も何もまだ始まってすらいないんだけどね」 穴党と鉄板派。 永遠に相容れない夢と現。 二人の激闘の火蓋が、その時切って落とされたのだった。 ※注 上の文はかなり誇張して書いてます。 実際は大穴と言うほど穴予想しないことを平にご容赦くださいますようお願いします。 では、秋華賞前日にまたお会いしましょう。 今私に言えることは一つだけ。 ブエナビスタ、全消し(笑)(もしくは二着固定)
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