探し人

11/30
前へ
/30ページ
次へ
「どうやらこの人を探していたようですね」  やはり、といった表情で俺を見る。 「私は異世界商人。この異世界屋を営むしがない悪魔でございます」  驚愕する俺を余所に、姉貴の声で異世界商人とやらが話を続ける。  異世界商人、藤堂達の噂が本当だったってか。  笑えない。あまつさえ姉貴の顔をしているというのだからなお笑えない。 「現実に飽きた人、現実に絶望した人、現実を見限った人。私はそんな人達に、新たな世界を作って差し上げているのです。その人達の存在と引き替えに」  存在と引き替えに。  その意味はよく理解できないが何となくはわかる。  つまり、姉貴は…… 「鹿山優香さんは、既にご自分の世界に行かれましたよ」  この世界にはもう、存在していないというのか?  冗談じゃない。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加