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「どうやらこの人を探していたようですね」
やはり、といった表情で俺を見る。
「私は異世界商人。この異世界屋を営むしがない悪魔でございます」
驚愕する俺を余所に、姉貴の声で異世界商人とやらが話を続ける。
異世界商人、藤堂達の噂が本当だったってか。
笑えない。あまつさえ姉貴の顔をしているというのだからなお笑えない。
「現実に飽きた人、現実に絶望した人、現実を見限った人。私はそんな人達に、新たな世界を作って差し上げているのです。その人達の存在と引き替えに」
存在と引き替えに。
その意味はよく理解できないが何となくはわかる。
つまり、姉貴は……
「鹿山優香さんは、既にご自分の世界に行かれましたよ」
この世界にはもう、存在していないというのか?
冗談じゃない。
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