日知屋城

6/13
前へ
/16ページ
次へ
                日知屋城本丸。上座には祐清が座している。その右手には祐吉、八代但馬守、佐々宇津次郎右衛門、荒武右近丞宗代、崎田摂津介、小山田主馬正、後藤雅楽助が座し、左手には伊東相模守、長倉能登守、小松兵部太輔、平賀正哉、坪屋次郎左衛門尉、杉田四郎兵衛尉、日野将監が座していた。  「では………誠に御上洛なされるのですな?」  下座に座す日知屋城主福永二郎兵衛尉祐謙が祐清に問うた。  「我等に残された手段は最早それしかあるまい。」  祐清は顔を伏せてそう答えた。  「都於郡は武州に制圧され、城下にはあやつを擁立する輩が現れ、剰え数年前に我が祖父が日向から追放した〝若き衆〟が土佐、球磨、真幸等から日向に戻ってきておる。あやつ等も豆州の孫たる我等を放ってはおかぬであろう。」 祐清はやや自嘲気味にそう言った。  「御上洛は当家御世継たる五郎様の御意志ぞ。方々!よもや異存がある訳ではありますまいな!?」 相模守が一同にそう言い放つと、一同は深々と頭を下げて主命に恭順する意を示した。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加