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そうして思いを巡らせていると、後ろから聞き慣れた声と共に腕を掴まれる。
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
「はあっ…おま…、さっきから、呼んで、だろ…っ」
目の前には、息も絶え絶えの愛しい人の姿。
「て…つ…」
「なん、で…まだここ、いんだよ…っ。お前ん家まで、行っちま、たじゃねーか、」
なんで…なんで。
混乱しながらも、とにかく哲から離れようと腕をブンブン振り回し暴れる。
「離…せ、バカ!変態!」
「ちょ…お前、声でけーって!時間が時間だけにマジで通報されるっつーの!」
小声で焦る哲を尻目に尚も暴れる。
が、やっぱり手ははずれない。
「落ち着けって、葵」
「落ち着けじゃねーよ!なんなんだよ、今さら!何しに来たんだよ!」
哲の制止も聞かず大声で喚き、反対側の手で哲を殴る。
「痛っ!ちょ、葵…」
「離、せよ…っ、中途半端なこと、すんな…!」
言いながらボロボロと涙が零れてきて、喉が詰まって言葉にならない。
文句言ってやりたいこと、たくさんあるのに。
「俺が……どんな思いで…っ、」
それでも今目の前に哲がいることが、嬉しくて、安心して。
どうしようも出来ない自分の気持ちを思い知らされる。
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