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◇◇◇
時計を見れば、もうこのベンチに座って2時間が経っていた。
いつも哲が仕事から帰ってくる時間からは、1時間が過ぎている。
誕生日を祝ってくれた友人達と少し早めに別れ、念のためと早めに来たのだ。
なぜだかそれほど寒さは感じなかった。
寒いとか考える暇もなく、俺の頭の中は哲のことばかりだった。
考えてみれば俺の人生、哲のことばかり考えていた気がする。
好きだと自覚してからは、少しでも大人っぽくなれるように努力した。
"僕"から"俺"に変えてみたり、"哲兄"って呼んでたのを"哲"って呼んでみたり。
我ながらその発想自体が子供っぽくて、ちょっと笑える。
そして何より、哲の前で泣かなくなった。
どんなに辛くても、泣きたくても、哲の前でだけは強い自分を作り上げた。
影では何度哲に泣かされたかわからないけど。
とにかく、精一杯背伸びして哲に追いつこうと必死だった。
もし今日で全部終わってしまったとしたら、俺はどう生きていいかさえわからない。
哲なしで生きたことが、今までなかったから。
本当の自分がどんな人間だったのかもわからない。
本当はもっともっと、ガキっぽい性格だったかもしれない、なんてふと思った。
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