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それから少し経った頃、俺の携帯が鳴った。
かじかむ手で開けば、ディスプレイには予想通りの名前。
ゆっくりと通話ボタンを押した。
「……はい。」
「あ、葵?ごめん、連絡遅れて。」
「ううん、いいよ。……どうした?」
「あー…、うん。今日、仕事長引いて…行けそうにないんだ。だからまた今度、」
「仕事終わってからでいいって言ったじゃん。」
哲が話終わる前にそう言うと、哲は少しの間押し黙る。
「………でもいつ終わるか、」
「いいって!……待ってるから。」
「風邪引くだろ。そんなとこで待ってたら危ないし、今日は帰れ。」
「……やだ。絶対帰んない。」
「……葵。」
「……哲。今日…なんの日かわかってるよね?…俺が言いたいことも。」
「………。」
「わかっててそんなこと言ってんの?」
「葵。……もう帰れって言ってんだろ。俺の部屋にいてもいいから、」
俺の質問に答えない哲。
それでもう、全部わかった。
「………もう、いい。」
それだけ言うと、耳から携帯を離して終話ボタンを押した。
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