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軽快に飛ばしていたが、足元の注意が不十分だったからか小さな石につま先を取られた。そして、大きく前によろめいたが、転ぶ一歩手前で姿勢を立て直した。
「きゃあ!」
――が、その背後で短い悲鳴が聞こえると同時に、左腕が後ろへと引っ張られた。その瞬間、彼女は踏み出していた右足に力を込めると、前へ踏み出しながら腕を斜め上へと持ち上げた。
肩の骨が軋む音が聞こえたが、今はそんな事に構ってはいられない。
肩越しに振り返ると、名も知らぬ同い年くらいの少女の顔を見た。その後ろに伸ばしていた左手には、少女の白く細い指が絡められていた。
「おい、大丈夫か!」
「は、はい。だ、大丈夫です!」
「よし!」
少女の返事はとても頼りないものだったが、彼女は頷くと更に走る速度を上げた。
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