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──…‥時は20XX年の春。
ここは公立阿川高校二年一組の教室。
その教室の一角。
教壇から見て一番右奥のベランダ側に顔を突っ伏して寝ている1人の少年がいた。
いかにもな風格の茶髪混じりのボサボサ髪の自然ヘアーに、普通と言わざるをえない170くらいの身長の少年。
彼が極度のめんどくさがり屋こと「飛時 京介(ヒトキ キョウスケ)」である。
彼曰く自分は『超絶思考能力』の持ち主なんだとか。
「おい、飛時」
その飛時の前の席の女子。
身長は160前後に見える。
その強気なつり目の瞳に茶色の髪の毛を左右でツインテールに結んだ彼女、「森野川 胡桃(モリノガワ クルミ)」が後ろの席の京介に声を掛ける。
「…おい、起きなって、小テストが始まるぞ」
「う~ん…むにゃむにゃ…」
…プチン。
いま彼女の中で何かが切れた…
気がする。
突然、ボサボサ髪の飛時の髪の毛を右手で鷲掴みにする。
「な、…いててててっ!!」
そして…
「ぎゃあああぁぁぁああっ!!」
強く引っ張った。
「何するんだよ!?胡桃」
京介はあまりの痛みに立ち上がって大声で怒鳴った。
「あんたが起きないから悪いんでしょ!?」
いきなりの出来事にクラスの生徒は一斉に京介のいる方向を向いた。
「はぁ…何だね、飛時くん」
教壇に立っている数学の教師の「竹沢 勤(タケザワ ツトム)」が小テスト用の紙をトントンとしながらこちらを向いて、またか、といった感じにそう言った。
「あ…いや、なんでもないです、あはは…」
そう言って席にゆっくり腰を下ろした。
ため息をつきながら。
「おい、胡桃…もうちょっと優しくできなかったのか?」
小声で呟く。
「あんたが悪いの」
そう言いながら小テストのプリントを回してくる。
京介はあたまをボリボリ掻いて…
「あー、えーと…」
頭の中で必死に思考を張り巡らせる。
しかし、結局はあるひとつの単語に辿り着く。
そう、一番惨めなあるひとつの単語に。
「…さーせん」
その単語を一言呟いた。
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