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「お、そうだった…今日聞いたか?」
食堂で頼んだ定食セットを飛時と茅原が座っているテーブルの上に置くと、おもむろに相澤が発した。
「ん、なんだ?」
弁当箱に手をかけようとしたが、手を止めて聞きかえした。
「そういえば言ってましたね…朝あのこと」
飛時は何も分からない。
「お前ら同じ二組だからって隠しごととかすんなよなぁ」
茅原に腕をうりうりと当てて聞く。
「…は?飛時は知らない訳ないだろ」
相澤は本当に意味が分からないといった感じで話しを掛けてくる。
だが、もちろん飛時にはもっと意味が分からない。
そして、茅原が…
「そうですよ、だって一組に転校生が来るって…」
「転校生!?…はっ!!」
そうだ。
その時、飛時はそう思った。
どうせ、その手の話しは朝のホームルームにするのが常識だろう。
どこの高校もそのような感じの筈だ。
もしくは、前の日の帰りのホームルームとかが良いところだろう。
だが、飛時には絶対にそれを知らないと言える自信がある。
紛れもない。
ホームルームの時間いつも自分の状態は常にこの腐りきった自分には無縁の現実から逃れるが如き行動を行っていたはずだ。
つまり…
寝ていたのだ。
「転校生!?俺んとこのクラスにか!?」
相澤は椅子に腰をかけると箸をクルクルと回しながら。
「女の子らしいぞ~、良かったなモテ男♪」
「何がモテ男だ…馬鹿らしい」
ふてくされたようにそう言いながら弁当箱の結び目をほどく。
「とか言っちゃって~、その弁当も彼女さんのだろ」
実際、飛時はこの学校では『五本の指に入るイケメン』として新聞部の記事に載ったこともあったくらいだ。
「あいつは彼女じゃねぇよ、…従姉なんだよ」
弁当に入っていたタコさんウィンナーを食べながら呟いた。
「え、そうだったの?知らなかったぁ…」
「お前らに教える義理もねぇしな」
二人は黙々と食べる。
その沈黙は一分も続かない。
相澤は沈黙が大嫌いな男でもあるからだ。
「とにかくだ!!その女の子が可愛いかどうかについてだが、どう思う?飛時」
「だぁっ!!全く知らねぇってのにうるせーなぁ!!」
相澤は箸でこちらを指して言った。
「そう、そこだ、今回の転校生は俺と茅原が情報を探ったのにも関わらず全くと言っていいほど情報を得ることは出来なかった」
なんだかよくは分からないが、とりあえず相澤はシリアスに話し出した。
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