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ここは、飛時たちが通う高校の三階に当たる場所。
その三階の一番端の部屋。
シンプルに「倉庫」と文字の入った看板を下げた一つの部屋があった。
飛時とメリサはその部屋を目指して階段を上がっている最中だった。
「メリサちゃん…だっけ?」
「…はい…何でしょうか…」
「あ、あのさ…さっき自己紹介してる時の話しなんだけどさ、なんか君の背後に歯車みたいな大きななにかが見えた気がしたんだけど…って、すまん!!そんなこと言っても意味わかんねえよな、聞き流してくれ」
飛時は照れ隠しとばかりに髪を掻き乱しながら階段を慌ただしく先に上った。
「…それは…私……の…響…かな…」
彼女はくぐもった声で何かを呟いた。
「ん、なんか言ったか?」
「なん…でもない…」
二人は沈黙のまま倉庫へと着いた。
「ここだな、よし、俺が机持つから、メリサちゃんは椅子持てるか?」
「…急がないと…来る…」
「は?」
その時だ。
ものすごく大きな何かを感じた。
さっきの歯車のようなものとはまた違う感じの何かだ。
でも、まだ正直胸騒ぎだと思っていた。
「来るって何が?」
「………」
虚空を見るように何もない空間をメリサは見つめている。
「…とりあえず、椅子は任したからな」
そう言って机を持って階段を下りようとした、その時だった。
ガンッ!!
何かが壁に勢いよくぶつかる音がした。
振り向く。
そこには壁際でうずくまっているメリサの姿があった。
「おい、どうした!?大丈夫かよ!?」
急いで駆け寄り、周りを見渡す。
しかし、何もなかった。
ましてや、人一人を吹き飛ばせるようなものなど。
メリサは虚空を指さして、かすれるような声で言った。
「…歯車が…えた…あなたたら……える…ず…」
「何だよ!?聞こえねぇよ!?」
「………」
もう気絶していた。
「おい、ちくしょう…一体何がどうなってんだよ!?」
息はある。
それを確認して彼女を背負った。
フワッと軽い。
柔らかい胸が当たる。
抱き抱えている太ももが異様に柔らかい。
男というものはどういう状況に陥ろうともそういうことに関しては敏感なものだ。
「…っちくしょー…俺の馬鹿が…」
彼は階段を下りていく…
今はとりあえず、あの場所から遠ざからなければいけない気がしたから…
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