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「あ…れ?」
飛時は目を疑った。
今、階段を下りていた。
そう、下りていたのだ。
しかし、辿り着いたところは…
「…なんで…屋上…に着いたんだ」
このような状況になるとたいてい人間の脳は嫌な予感しか考えなくなる。
振り返った。
階段がある。
とっさに階段を下りようと扉をくぐった。
その瞬間、また目を疑う結果となる。
眼前に広がっていたのは…
「ここは…グラウンド…だよな、何がいったいどうなって…」
そう、グラウンドだった。
そして、次の瞬間。
「ぐはっ!!」
飛時の体は宙を舞っていた。
なにか大きなものに殴られたように。
そして、飛時の体は地面を転がり、止まった。
「いてぇ…、なんだよいったい…」
そして、はっと気づく。
背負っていたはずのメリサがいなくなっている。
本来ならば一緒に転がるはずなのに。
ふと、空を見上げる。
そして、さらなる異常な異変に気づくことになる。
「色が…反転している?」
そう、空は澄んだ青ではなく濁った赤に、太陽は神々しいまでに光るわけでもなく、正反対の漆黒の色を放っていた。
そして、その異様な世界の中にメリサの姿を確認した。
しかし、やはり普通にいるでもなく宙に浮いていた。
いや、浮いているというよりは見えない何かに縛られているような感じも受ける。
「メリサちゃん!!」
飛時は走り寄ろうとした。
が、先程と同じように見えない何かにぶつかり弾かれる。
しかし、今ので飛時は感づいた。
この見えない何かは壁のような形状のものだということに。
「へん、俺の超絶思考能力なめんなよ」
とか馬鹿らしいことを言って見えない何かにまた突っ走っていった。
また、ぶち当たる。
しかし、今度は違う。
必死に見えない何かに手を張りつける。
そのまま、その見えない何か伝いにメリサの方へと突っ走る。
「こうすりゃいきなりぶつかることもないだろ!!」
その勢いのままメリサの近くにまで走り、メリサ目がけて右手を伸ばす。
メキメキ…
だが、その伸ばした手を上からコンクリの壁を落としたかのように見えない何かが踏み潰す。
「…があっ」
しかし、諦めない。
ついさっき知り合ったばかりの女の子だ。
本来なら助ける義理もない。
でも…
それでも…
飛時は今までにない気持ちで、失いたくないというこの気持ちで正気を保つ。
まだ相手の気持ちは関係ない。
この一目惚れした自分の気持ちにかけて…
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