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…突然、何かを感じた。
日常ならばただの錯覚だ、などといって無視してもいいほどの微弱ななにかを。
しかし、今は藁にもすがりたい状況だ。
猫の手とは言わずに全ての生命にある手足でも借りたい状況だ。
とにかく、己が感じたものをたよりに左手を伸ばす。
そして…
あっさり、左手はメリサの細い腕を掴んだ。
そこには見えない何かがあるはずなのに。
とにかくがむしゃらに引っ張る。
すると、縛りからほどかれたかのように容易く引っ張れた。
その勢い余ってか二人は倒れ込む。
「ぐあっ!!」
右腕は考えられないほど痛む。
先程までずっとコンクリの壁に潰されたような感覚だったからだ。
とにかく、この意味不明の状況から抜け出さなければ安心もへったくれもない。
飛時は痛みのあまりにだらんと垂れた右腕を無視して左腕のみでメリサを抱えてグラウンドを出た。
その不思議な色に包まれた謎の空間の中心部、グラウンドから声がする。
「今のやつの力…左腕のみだったが…これはまずい…対神(コツァツェルト)みたいな力だったな…記憶した…」
女性の低い声。
何もないはずのグラウンドから…
この異様な空間に響き渡り、消えた。
そして、同時にこの異様な空間も何事もなかったかのように…
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