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向かいの席には腰が曲がってそうなみすぼらしいおばあさん。
灰色…って感じ。
年金暮らしってそんなに貧しいのかしら?
向かって右端にはサングラスをかけた金髪の…いわゆる、ギャル、というのかしら。
細い足をふてぶてしく組んで、気怠そうに携帯をいじっている。
家庭に恵まれなかったのね。かわいそうに。きっと食べ物をいただくときのマナーも酷いんでしょう。
ああ低脳。無情なものね。
空は青い。浮かぶ雲まで芸術的にみえる。
暖房でやっと足元がぬくぬくとしてきたところで、次は新宿というアナウンスが流れた。
わたしは鞄を肩にかけながら立ち上がる。
電車って思いのほか面倒だわ。
いちいちSuicaも出さなくちゃいけないし。
やっぱりいつものように梨本さんでよかったのよ。
…あら、いけない、車で送ってもらうことを"梨本さん"と呼ぶ癖が。
小さい頃からの癖ってなかなか直らないのよね。
うっかり倒れないように気をつけなくちゃ。
電車の揺れに気を配りながらそろりそろりと扉のほうへと歩をすすめていると、ギャルがサングラスをずらしてわたしを睨んできた。
まるでゲテモノを見るかのような目つきで、上から下までわたしの格好を舐め回すように見ている。
それはそれはさりげなく。
彼女、育ちは悪いのだろうけど、都会人ね。
さりげなく人を盗み見ることに慣れているわ。
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