::ありったけの絆創膏を(少年)未

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  今日は華塚学院高校の入学式。 司会を任された入学式も終わり、生徒会室から見える桜は少し散っているようだった。 隼人や環はさっさと帰ってしまった。 「あー、疲れた」 赤毛が似合う武はソファーに座った。 こう見えて風紀委員長の武は警備係で、走り回っていた。 「お疲れ様」 そんなことを言った涼も疲れているように見えた。涼は新入生の誘導係だった。 さっき、外部生が2人+関西弁の弟を武が連れてきていた。 外部生の1人は宇佐波玲。 兄ちゃんほどじゃないが、結構可愛かった。 そして1人は渡友陽。 顔はいたって普通。伊織に逆らうという命知らずな奴だった。 宇佐波が襲われかけているところを渡が武からホウキを奪い、乗り込んだらしい。 「ワタラセか…」 …渡だろ。 武は顎に手を当ててほくそ笑んだ。かわいそうに、渡は目を付けられたようだ。 「あいつが壊した扉と襲ってた奴らも理事長に報告しないとな。あーめんどくせぇ」 武が立ち上がると同時に生徒会室のドアが開いて、笑顔の伊織が入ってきた。 「今日は颯の誕生日だね。おめでとう!」 「…へ?」 カレンダーを確認してみると、確かに俺の誕生日だった。 「忘れてたのー?とりあえず誕生日プレゼントだよ」 「…ありがとう」 渡されたのは紙切れでなにかのチケットかと思った。 「えって、お泊まり無料券…HOTEL…ラ、ラブホの券だろ!?」 「そうだけど。あ、使ってね」 なにが使ってね、だ! 生徒会室のゴミ箱に捨てようとしたら、ガシッと笑顔の伊織に手を掴まれた。 「人の好意を無駄にするの?それにゴミ箱に捨てて見られたら誤解されるでしょ?」 伊織が怖すぎて、仕方なく上着のポケットに押し込んだ。  
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