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「おめでとう。彼氏に祝ってもらえよ」
武はニヤニヤしながらまた紙切れを渡してきた。
よく見るとまたラブホのチケット。
「伊織のは華塚駅裏のホテルだけど、俺のは浜岡駅裏のホテルだから安心して行けるぜ」
「い、行くかバーカ!」
伊織は面白そうに見ていて…こいつらグルだ!
まともなのは涼だ…け…。
「涼!お前なに笑い堪えてんだよ!」
「静もよ、ろこぶ…」
涼は堪えきれずに吹き出した。
「彼氏と行ってきてね」
「行かねぇ!もう帰る!」
鞄を持って帰る俺に頑張れよとかなんたら聞こえてくる。
こんなプレゼントいらねぇ!
下足場で靴に履き替えようとしたところで、携帯が振動して兄ちゃんからの着信を知らせていた。
『颯!一緒にケーキ食べよう!』
もう兄ちゃん可愛い!
あんなチケットくれる奴らとは大違いだ。
「ありがとう」
『あ。でも彼氏と一緒に過ごすんだったら…あ!』
ああ、静のヤロー。
去年の誕生日は来年また祝うよ、って言っていたくせに今年は忘れてやがる。
『よぉ。今日誕生日なんだって?』
「げっ…。なんでお前なんだよ」
いきなり可愛い兄ちゃんからこの憎たらしい奴に代わった。
『悪かったな、義弟』
「お、義弟とかやめろよ!」
そう、兄ちゃんを奪った香月芳胤。
こいつの兄ちゃんが姉貴と結婚してるから親戚になってしまうんだろうが、俺がこいつから義弟なんて言われることはない!
『ああ、そうだ。お前にもプレゼントやるよ。華塚駅裏のホテルの無料宿泊け…』
「うるせぇ!ホテルホテル言うな!」
ブチッと電話を終了。
どいつもこいつもホテルホテル言いやがって!
「なに言ってるんだ、お前…」
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