::ありったけの絆創膏を(少年)未

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  びっくりして振り返ると遠矢兄貴がクラスの日誌と、購買帰りなのかパンを手に持って立っていた。 「学校出てからだったらホテルホテル連呼していいから」 「連呼してねぇよ!」 遠矢兄貴はデルタのOBで華塚の卒業生の碓井隆之介(うすいりゅうのすけ)とデキている。 まさかの兄貴が押し倒される側で、よく分からないが男前受けらしい。 「ああ、誕生日おめでとう」 遠矢兄貴がポケットから紙切れを…。 「ホテルの券とかだったらいらない」 「なに言ってるんだよ…」 よく見ると図書券で1000円分…。 「今時図書カードだろ!?」 「貰ってたのが溜まってたんだよ。隆之助もいらないってさ」 「…もういいや。ありがとう」 ホテルの券よりはマシだ。俺はポケットに入れて、遠矢兄貴と別れた。 華塚駅までとぼとぼ歩いてるうちに、静への怒りがふつふつと沸き上がってきた。 電話してやろうかな。 …いやいや。俺は男だし、そんなことされても嫌がられるかもしれない。 「…女々しすぎるだろ」 そんなことを思いながらもアドレス帳を開く自分が情けなく感じてきて、クリアボタンを押したつもりが通話ボタンを押してしまっていた。 切ろうとしたら、静はワンコールで電話に出た。 早すぎて切れないだろ。 『どうしたの、颯?』 いつもの声が聞こえてきて思った。絶対こいつ忘れてる、と。 「間違えて電話しただけだ!あ、今どこに…」  
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