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指を盗まれて2週間がたった。そんな僕に、1本の電話が入った。
「…片山くん?」
この声には聞き覚えがあった。声の主は、高校の時の元カノ、サクラだ。
「そうだけど……何か用?」
「指のこと…聞いたから、ちょっとどうしてるかなって思ったの」
「あー…うん。大丈夫だよ」
「犯人、見付かった?」
「いや…手掛りすらないから、困ってる」
「そうなの……」
サクラも、実はピアニストで、次のコンサートに僕に来てほしいと言った。
僕は迷った。
ピアノが弾けなくなってから、ピアノなど見ていない。触れたとたんに、僕の何かが壊れてしまいそうだからだ。
しかし、ピアノの音色が恋しかった。僕の体は、ピアノを求めていた。
「あー……じゃあ、チケット2枚売って」
「わかった。輸送するから、絶対来てね」
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