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幾分深夜に家に着いた。橘を支えながら、マンションに上がった。橘はずいぶんよくなっていたが、まだ苦しそうだった。
ふと橘が立ち止まる。
「橘?大丈夫か?」
「……誰?」
橘がそう言った。見ると、僕の部屋の入り口に、サクラがいた。
「サクラ……」
沈黙があった。
橘が咳をした。
「橘、大丈夫か?もう入ろう」
僕は橘を急いで部屋に入れた。サクラは声も出せずに、僕を見ていた。
「サクラ、用事あるなら早く入って」
サクラは慌てて入ってきた。僕は橘をソファに座らせた。
「橘、もう寝ろ。体まだ、辛いだろ?」
しかし橘は頷かなかった。僕の服をつまんで、離さない。サクラをずっと見ていた。
「自分で、ちゃんと名乗ってよ。あんた誰?」
サクラは部屋の隅で小さくなっていた。
「み…三木サクラ」
「…………。」
「橘はもういいから、寝ろ」
僕は無理矢理に橘を寝かせた。橘はやはり辛かったようで、すぐに眠った。
「新しい彼女?」
「え?ごめん。あいつちょっと体調悪くて…」
「………だから来てくれなかったの?」
「え?ああーそんな事で来たの?」
「絶対来てって言ったじゃない…」
「仕方ないだろ。橘が大変だったんだから。それに、もうお前に束縛される理由なんてないだろ」
「………そうだね」
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