狂鳴

2/3
前へ
/41ページ
次へ
    幾分深夜に家に着いた。橘を支えながら、マンションに上がった。橘はずいぶんよくなっていたが、まだ苦しそうだった。   ふと橘が立ち止まる。   「橘?大丈夫か?」   「……誰?」   橘がそう言った。見ると、僕の部屋の入り口に、サクラがいた。       「サクラ……」       沈黙があった。   橘が咳をした。   「橘、大丈夫か?もう入ろう」   僕は橘を急いで部屋に入れた。サクラは声も出せずに、僕を見ていた。   「サクラ、用事あるなら早く入って」   サクラは慌てて入ってきた。僕は橘をソファに座らせた。   「橘、もう寝ろ。体まだ、辛いだろ?」   しかし橘は頷かなかった。僕の服をつまんで、離さない。サクラをずっと見ていた。   「自分で、ちゃんと名乗ってよ。あんた誰?」   サクラは部屋の隅で小さくなっていた。   「み…三木サクラ」   「…………。」       「橘はもういいから、寝ろ」   僕は無理矢理に橘を寝かせた。橘はやはり辛かったようで、すぐに眠った。   「新しい彼女?」   「え?ごめん。あいつちょっと体調悪くて…」   「………だから来てくれなかったの?」   「え?ああーそんな事で来たの?」  「絶対来てって言ったじゃない…」   「仕方ないだろ。橘が大変だったんだから。それに、もうお前に束縛される理由なんてないだろ」   「………そうだね」
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加