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僕がピアノを始めるきっかけとなったのは、物心ついた頃から家に1台のピアノがあったからだ。そのピアノには、祖母の存在が大きく関わった。
まだ戦時中だったころ、祖母はまだ小学生であった。音楽が大好きな少女であったが、なにしろ戦時中だ。歌を歌えば、非国民だと言われかねない。
しかし祖母は歌った。すると近所の大人には怒鳴られ、父親には殴られることとなった。祖母は子供であったから、理由はわからなかったが、それが恐ろしくて歌えなくなった。
そんなある時、祖母の学校に新しく音楽の先生がやってきた。その先生は、放課後に子供たちをこっそり集め、皆で歌を歌った。
祖母は音楽の楽しさを思い出し、またその先生をとても慕った。その先生は、祖母にピアノを教えてくれたという。
しかしその先生は、亡くなってしまった。祖母は理由は覚えてないらしい。
祖母は先生に頂いた楽譜をとても大切にしたという。そして、いつまでも音楽は好きだった。
僕が産まれたとき、祖母はピアノを習わせようと、ピアノを買った。先生が最後にくれた、楽譜を弾かせようとしたのだ。
よって、僕はほとんど強制的に、ピアノを習うようになったのだ。
祖母が大切にしていた楽譜は、難しかった。なので祖母は、僕が大きくなるまでは、自分で持っているといい、どこかに隠してしまった。
そして僕が小学3年に上がったころに、祖母は亡くなった。
今ならきっと、僕に弾けるはずだが、楽譜は見付かってない。
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