【第二幕】薔薇月影

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【第二幕】薔薇月影

カーテンを通り抜けて月光が差し込む 薔薇はその光を受けて物憂げな陰を 辺りにばら撒いた 寂しい… 一人で生きてきた 誰にも甘えたくなかった だからこそ言葉巧みに 自分自身操ってきた 「らしくないですね…。」 溜息と独り言 貴方が居ない夜は いや…今日と言う日は… 何故こんなにも心を覆い隠すのだろう 最初は気なんてなかった 聖ルドルフ学園テニス部のため そして自らのため ただ利用しようとしたに過ぎなかった 純粋だと思ったから 無垢で扱いやすいと思ったから それだけ 狡猾に指揮を取って ただの手駒に過ぎなかったのに その筈なのに 純粋すぎるが故 その笑顔が その愛撫が… 気付けば 僕の方が操られていた 絡められていた 薔薇の刺のような恋愛快楽… 「今ごろ…何をしてるんでしょうね…。」 悲愴になってさらに空しくなる らしくも無い態度 こんな弱弱しい僕が存在するなんて 自分でも信じられない 「アニキ…ですか?…観月さん…今はアニキのこと…忘れさせてください…。」 何度目の二人の夜だろうか 貴方は言った でも瞳は晴れては居なかった これほど不二周助という人間を憎んだ日は無い 「裕太…。」 髪の毛を触る癖も忘れてる それほど心は震えている 僕はどうしたらいいんだろう こんな日の夜は… … ふと 強い風が吹く カーテンがなびき ちらちらと月光が揺れる その瞬間  飾られた薔薇の花が散る … 一瞬だけ 一瞬だけ そこに兄と戯れる裕太の姿が映った気がした 「…クソッ!」 感情が溢れ出して床を叩きつける そして 頭を抱え笑う 狂っている 僕は 狂っている 愛とは無責任で重大で大きな過ち きっと貴方は自分の中で兄を殺め切れていない 結局…僕は道化でしかないんだろう… 雫が頬を伝った 薔薇の花が散るように 絨毯を埋め尽くして こんな月の日の夜に… 貴方は何をしているのだろう あの男が居る場所で… 【END】
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