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杏里さんは苦虫を噛んだような顔つきで真剣に俺を見てくる。今までの何処かの駄目人間みたいな雰囲気はなく、まるで悲劇のドラマにでてくる――いや、取り敢えず。
どうやらガチなようだ。
赤の他人でも、そんな様子の人を無下に扱うことができる程、俺は……悲しきかな。
お人よしのようで。
「なにかあったんですか?」
聞いてしまった。
「計画通り」
目を逸らし、杏里さんがなにかを呟いたような気がするが、あまりにも小さすぎて聞こえなかった。
「私たちを泊まらせてくれない……?」
いったい何を言っているのか。理解するのに数秒の時間がかかった。
泊まらせる? 宿泊ですか? あなた達を?
「えぇ!?」
驚きの声が口から漏れる。
この人達は……家がないのか?
「無駄な詮索はしないでほしい」
「……いや、でも」
赤の他人を家に泊めるなんて。
普通に考えればあり得ない。いきなり何処かの知らん人が家に泊まらせてくれだぞ? 俺ん家はホテルでも民宿でもないんだから……。
しかもこの家に住んでいるのは事情があって俺一人。
警戒心は更に上がる。
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