プロローグ

6/8

23人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
 杏里さんは苦虫を噛んだような顔つきで真剣に俺を見てくる。今までの何処かの駄目人間みたいな雰囲気はなく、まるで悲劇のドラマにでてくる――いや、取り敢えず。  どうやらガチなようだ。  赤の他人でも、そんな様子の人を無下に扱うことができる程、俺は……悲しきかな。  お人よしのようで。 「なにかあったんですか?」  聞いてしまった。 「計画通り」  目を逸らし、杏里さんがなにかを呟いたような気がするが、あまりにも小さすぎて聞こえなかった。 「私たちを泊まらせてくれない……?」  いったい何を言っているのか。理解するのに数秒の時間がかかった。  泊まらせる? 宿泊ですか? あなた達を? 「えぇ!?」  驚きの声が口から漏れる。  この人達は……家がないのか? 「無駄な詮索はしないでほしい」 「……いや、でも」  赤の他人を家に泊めるなんて。  普通に考えればあり得ない。いきなり何処かの知らん人が家に泊まらせてくれだぞ? 俺ん家はホテルでも民宿でもないんだから……。  しかもこの家に住んでいるのは事情があって俺一人。  警戒心は更に上がる。      
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加