~こんな奴だったとは~

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紅葉市に太陽が沈み夜が訪れる 俺はバイトが終わり 街灯に照らされた帰り道を静かに歩みを進める 今日の反省点は奈木に携帯のアドレスを教えてしまった事だろう だって余りにもしつこかったのだから仕方なかった部分が多少なりある でも教えた時 奈木になら良いか と自然と思っていたんだ…… もしかして 彼女が俺に関わってくるのでは無く 俺の方が彼女との関わりを持とうとしているのかもしれない 彼女と出会って 自分の事が自分で分からなくなってきた すれ違う学生達やサラリーマン達は 全員表情が明るい気がする きっと 帰る場所があるから………待っている人がいるから……… 今の俺には帰る場所も待っている人も居ない ………明るい未来も……… そんな事を考えているうちに アパートマルセイユ が目で確認できる位置まで到着していた 俺はそのまま アパートマルセイユ には帰らずに 近くにある公園に寄った ブランコに座り 空を眺めると 地元とは異なり 星を確認する事が困難であった 地元の夜空は星が数えきれないぐらいに輝いていたのを覚えている 「やっぱり都会だな」 何だか地元を思い出して 胸が締め付けられた 夜………太陽が沈み 弱々しい月の光が輝く時間帯 多くの人々は 昼と夜のどちらが好き? と聞かれると昼と答えるだろう でも 俺は夜の方が好きだ 俺が思い出す事が出来る思い出はほとんどが夜だから 幸せな思い出 も 辛い思い出も 夜空を見上げると自然と頭に浮かんでくるんだよ 俺へと向けられた美香の様々な表情が 星のように小さくても力強く輝いていた彼女が 会いたいよ 会って抱きしめたいよ たくさん話したいよ 美香……… 俺の頬にはいつの間にか涙が伝っていた 夜の公園には ブランコをこぐ音がしばらく続いていた ,
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