~雨がもたらした君との出会い~

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「良かったらこれ使って」 俺はそう言って 彼女に傘を差し出す 彼女は俺の言葉に驚いているのか 目を大きく開き 戸惑っていた やっぱり知らない奴からいきなり傘を渡されたら誰でも驚くよな 「え?でも そんな事したらアナタが……」 目の前の彼女はどうやら俺の事を気にしているみたいだった 俺は彼女の言葉に笑顔を浮かべて 「俺はバカだから風邪なんてひかないから 全然大丈夫だよ それよりも 早く学校行かないと遅刻しちゃうよ?」 俺は彼女にそう言いながら無理やり傘を渡す そして 彼女に背を向けて 未だに雨が降り続ける道を全力で走り出す 後ろから 先ほどの彼女の声が聞こえてきたが 雨の音に邪魔されて聞き取ることが出来なかった 冷たいな~ 俺は雨に濡れて顔にまとわりつく髪の毛を手で払いながらも走り続ける 車道からは トラックから水を飛ばされるし なんだか最悪の高校生活のスタートだと思う 周りの同じ高校の生徒達は親の車に送ってもらったり 傘を持っているからか ゆっくりと歩いて登校している なんて 甘ったれているガキ共なんだ 俺はムチャクチャな事を心の中で呟きながらも全力でダッシュしている 周りの生徒からは きっと あの子 雨に濡れて可哀想 とか思われている事だろう 自分でも 今の状態は惨めだと思う 俺は何故 あの女の子から目をそらす事が出来なかったのか? 分からない でも自然と彼女に歩みを進めてしまった この時の俺は 自分が感じてしまった気持ちに気づかないふりをしていた 有り得ない 権利がない 裏切りになる おれの一番は永遠に美香であると 出会った瞬間に好きになってしまった事実から目を伏せてしまっていた 好きと言う感情を拒絶していた 俺は胸につっかえる何かを感じながら 紅葉高校へと足を踏み入れた ,
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