~雨がもたらした君との出会い~

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…………………………… 雨の音が響いている 私の手には 先ほどの同じ高校の制服を着た男の子から渡された傘が握られていた ありがとうございます と彼に言ったけど 雨の音に遮られて彼には届かなかったみたいだ 傘には 井上圭介 と名前が書いてある きっと先ほどの男の子の名前であろう あの男の子は大丈夫と私に笑顔を向けて雨に打たれながら走り出していった でもね あなたはなんで そんなにもつらそうな笑顔を浮かべたの? どうして 泣きそうな顔をしながら笑うの? わたしの頭のなかには彼の泣きそうな笑顔が離れなかった 今まで 多くの人達の様々な表情を見てきたけれど あんな表情は見た事が無かった 彼のその表情を思い出しているうちに 自然と頬には涙が伝っていた わたしが彼を救ってあげなくちゃダメだ そんな気持ちにいつの間にかなっており 気持ちは膨らむばかりであった 自分にこんな感情があるなんて初めて知った こんなにも 誰かが気になるなんて今まで無かった 圭介君………わたしはね アナタに出会えて良かったよ アナタを思い続けて良かったと心から思っているよ わたしは圭介君の心の底からの笑顔が何よりも大好きだから 井上圭介君 顔と名前しか知らない人だけど これから色々な彼の表情が見たいな わたしは 彼から渡された傘を広げて雨が降り続ける道を歩き始める………わずかに残る彼の温かさを手に感じながら …………………………… ,
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