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独白
だめ!…だめ!
しっかりとあたしの目を捕らえて、その声でそんな事言われたらあたしは …あたなから逃れられなくなっちゃう。
「だったじゃなくて、現在進行形…好きなんだ」
「…敬一郎さんは数年前って言ってたけど」
陸人は苦笑してあたしから視線を外した。
「朝香を初めて見たのは…前に話したライブハウス。
あの中で朝香はたった一人着物姿だった。
皆盛り上がってる中で後ろの壁によっ掛かって、ステージ上の俺を見てた。
多分、俺の辺りの空間を見てたんだろうけど」
何となく覚えてる。3年前の傷心なあたしを、友達が気晴らしにってライブに誘ってくれたんだ。
「それから、あそこでライブをするたび朝香はいたんだ。
いつも可愛く着物を着こなしてて、今日もいるなっていつの間にか探してた」
「…………」
「ある日のライブで、興奮したファンの人が鼻血出して朝香の前で倒れたんだ。ちょっとザワザワしてきて曲を止めるか迷った。
そしたら朝香はステージの俺に首を振って、口ぱくで『つづけて!』って言ったんだ。
そして自分は着物が汚れるのも構わずその人を介抱し始めて…」
確かにあの時は白地の着物が駄目になったけど。
そんな事より助けなきゃって気持ちが上回ってた。
「その時、俺朝香に釘付けで…歌詞間違えてメンバーに怒られたっけ!」
…釘付けってそんなに見られてたのか。あの時。
「で、こっからが問題。先に謝る。ストーカー紛いでごめん!!」
「ストーカー?」
「…俺、あの後ライブハウスの中朝香を探しまくったけど、見つけらんなくて。それ以来朝香ライブ来ないし。
こっちのスタッフや友達に頼んで着物の子の情報をなんとか集めたんだ」
「どんな情報?」
陸人は申し訳なさそうにあたしを見た。
「名前とケー番」
それって…。
「もしかして、それでわざと間違い電話したの?」
「まさか!そのデータはなくした携帯に入ってたんだよ。
だから、本当に望月さんの番号と似てて間違えたんだ。けど朝香の番号何となく覚えてたから、もしかしたらと思って2回目はわざと…」
「うわぁ…。あれはある意味確信犯だったんだ」
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