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「はぁ……」
それはあたし的にも聞いてしまって複雑なんだけど…。
敬一郎さんは真剣な眼差しであたしを見た…かと思うとクシャっと笑った。
「けどここまで来たって事は朝香ちゃんは陸人に対して好意はあるわけだ?」
この叔父と甥っ子は甘いマスクと声であたしをドキドキさせる。
「…まあ、そうですね。好きかって聞かれたら…否定はできません。」
「…何か引っ掛かる事でもある?」
引っ掛かると言うかあたしの気持ちの問題だし。
「………」
「もし…陸人に相談しにく事なら僕が相談にのるよ。何かあれば…ここに連絡して」
と 言うと内ポケットから名刺を出した。
「敬ちゃん!!!何朝香口説いてんだよ!!」
その時陸人が戻ってきた。
「だって朝香ちゃんまだ付き合ってないって言たぞ」
ニヤニヤと陸人を見ながら敬一郎さんが言った。
「そっ、そうだけど…」
陸人の声がしりすぼみになってゆく。
仲良しだなぁ。
あたしはクスクス笑いながら敬一郎さんの名刺をしまい、自分の仕事で使っている携帯番号入りの名刺を敬一郎さんの前に置いた。
「一応、あたしのもお渡ししておきますね」
陸人が大袈裟にショックを受けた顔をしてその名刺を見た。
「名刺もらっちゃったぞ陸人」
敬一郎さは陸人をからかって遊ぶ。
いつもあたしが陸人にされてるような事を、まんま敬一郎さんにされてる様子は、なんだか微笑ましかった。
「所で陸人。来月からでいいのか?」
「あ、うん。お願いします」
陸人があたしに向き合った。
「朝香、俺来月からこの街に来るんだ。司法試験やりやすいようにプロの世話になりに」
と笑って敬一郎さんを指差す。
そういえば、敬一郎さんは弁護士さんなんだっけ。さっきの名刺にも橘法律事務所って書いてあった。
「お前ね、仮にも師と仰ごうとしてる相手を指さすんじゃないよ」
全くだ。
いつもよりはしゃいでいる陸人は年相応に可愛いくみえた。
「じゃあ、今月末荷物持って居候しにくるから」
「わかった。あんまり色々持ち込むなよ」
「ああ、大丈夫!最低限にまとめてくる」
敬一郎さんは午後から仕事らしく、あたしたちはその足でドライブへと出掛けた。
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