71人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ん?」
「……ありぃ?」
リビングに戻った途端、とある“変化”に気づいて顔を見合わせる我々。
あのですね。スモーカーが二人いりゃあ、煙草の匂いって、そうそう消えないんです。
煙草そのものの匂いだけでなく、フィルターが焦げたときの匂いや揮発性のライター・オイル、切り口から零れた刻み葉等々、喫煙所特有の様々入り混じった匂いの粒子がね、暫くの間、空気中に漂うものなんですよね。
それが、全くないんです。
目の前のローテーブルには、吸い殻が何本も突っ込まれた灰皿が置かれてるってのに。
あれだけ狼煙上げてたのに、“お清め”して戻ったら、何故だか、部屋の中に煙草臭がないんですよ。
「……ここんチ、空気清浄機とかは」
「ねえよ、んなもん」
あるべき筈のモノがない。
なにも手を下していないのに、匂いが数分で消えてしまう、というのは納得しかねる。
でも、現実なわけで。事実、そうなんだから認めるしかないんだけれども……ヤですよね、なんとなく。
テーブルを前にしながら、ふたりとも腰を下ろさない。いや、下ろせない。
最初のコメントを投稿しよう!