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だからとりあえず赤西が落ち着くためにも、優しく背中を撫でる。
するとよりいっそう強く抱き締められた。
…すっげぇ不謹慎なことに、心臓の音が聞こえちゃうんじゃないかってくらいうるさい。
そんな場合じゃないのに。
なんて最低な奴なんだよ俺。
せめて、せめてどうか赤西に聞こえてませんように。
背中を撫でながら必死に自分も落ち着こうとしていると、赤西がゆっくり顔を上げた。
そして視線が絡み合う。
泣いてたせいか、なんだか熱っぽい視線。
…あ、なんかヤバイ。
そう思った時にはもう遅かった。
気付いた時には俺の唇に柔らかい感触。
それが赤西の唇だと理解するのにそう時間はかからなかった。
ちゅっとほんの一秒のキス。
だけど俺の頭の中を真っ白にするには十分だった。
「…あか、にし…」
『仁。仁って呼んで?』
ずっと呼べなかった名前。
だって呼んじゃったらもう気持ちを抑えられそうにないから。
だけど赤西のすがるような目線に耐え切れなかった。
「……じん。」
それが合図かのようにさっきよりも深い口づけを交わす。
キスの途中にそっと目を開け視線を外すと、ここから先にあるいつもの信号が赤点滅に変わっていた。
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