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何故、飛ぶのかって?
そんなこと、知らないわよ。
飛びたいから、飛ぶ。
強いて言うなら、そうね、私は――……勝ちたい。
だから誰よりも速く、何よりも早く。
私は、飛ぶの。
「瑠音先輩ッ!!」
「大丈夫よ、礼」
本当に可愛いわ、礼……。
でも、絶対口には出さない。恥ずかしいから。――……言える訳無いじゃない……っ。
「ふふっ……」
右足を前に。
一歩目から全力。
屋上の縁を蹴って、私は翼を伸ばした。
ばさぁっ!! と、光と窮屈さが解き放たれる。
重力に捕われて、体が下へ落ちていく。
落ちていくこの感覚が、私は大好き。
あらゆる戒めから、体が解き放たれる瞬間だから。
風を受けて下へ、下へ。
私の嫌いな地面が迫る。
上からも、私を追って来る男共が、何人もやって来る。
「ぁは……っ!!」
堕ちていく。
追って来る。
迫って来る。
私を求めて、みんながみんな、私を見てる。
それを吹き飛ばす感覚が、私は大好き!!
一度、大きく羽ばたく。
轟ッ!! と。
光と一緒に、凄まじい爆風が、背後にぶちまけられた。
私の体は、地面スレスレを舐めるように、高速で行く。
――……また道路を壊したかしら?
まぁ、良いわよね。
可愛い後輩の元に、急がなければならないのだから。
あなたはいつだって、待っていてくれるものね、礼?
「瑠音先輩……っ!!」
「お待たせ、礼」
「全然、待ってませんよ。今日も、一番速かったんですから」
「当たり前じゃない。――――なのに」
「え?」
「……な、なっ、なんでもないわ。さ、帰るわよ」
「はいっ」
――……。
言えるワケ無いじゃない。
あなたに早く会いたいから、1番を取りたいだなんて。
そんな、恥ずかしいコト……。
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