序章

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△▼△ 何故、飛ぶのかって? そんなこと、知らないわよ。 飛びたいから、飛ぶ。 強いて言うなら、そうね、私は――……勝ちたい。 だから誰よりも速く、何よりも早く。 私は、飛ぶの。 「瑠音先輩ッ!!」 「大丈夫よ、礼」 本当に可愛いわ、礼……。 でも、絶対口には出さない。恥ずかしいから。――……言える訳無いじゃない……っ。 「ふふっ……」 右足を前に。 一歩目から全力。 屋上の縁を蹴って、私は翼を伸ばした。 ばさぁっ!! と、光と窮屈さが解き放たれる。 重力に捕われて、体が下へ落ちていく。 落ちていくこの感覚が、私は大好き。 あらゆる戒めから、体が解き放たれる瞬間だから。 風を受けて下へ、下へ。 私の嫌いな地面が迫る。 上からも、私を追って来る男共が、何人もやって来る。 「ぁは……っ!!」 堕ちていく。 追って来る。 迫って来る。 私を求めて、みんながみんな、私を見てる。 それを吹き飛ばす感覚が、私は大好き!! 一度、大きく羽ばたく。 轟ッ!! と。 光と一緒に、凄まじい爆風が、背後にぶちまけられた。 私の体は、地面スレスレを舐めるように、高速で行く。 ――……また道路を壊したかしら? まぁ、良いわよね。 可愛い後輩の元に、急がなければならないのだから。 あなたはいつだって、待っていてくれるものね、礼? 「瑠音先輩……っ!!」 「お待たせ、礼」 「全然、待ってませんよ。今日も、一番速かったんですから」 「当たり前じゃない。――――なのに」 「え?」 「……な、なっ、なんでもないわ。さ、帰るわよ」 「はいっ」 ――……。 言えるワケ無いじゃない。 あなたに早く会いたいから、1番を取りたいだなんて。 そんな、恥ずかしいコト……。
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