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自己紹介がまだだったっけ。
僕の名前は羽瀬川礼 (はせがわ・れい)。
学園の1年生にして、『飛行部』唯一の平部員だ。
飛行部とは、個人飛翔用機械を用いて、1kmから5kmの短距離をいかに速く飛べるかを競う競技の部活だ。
それはいわば、空中のトラックアンドフィールド。
僕らはその大会で勝つために、日々練習を重ねている。
「今日はAコースを5周よ。目標は自己ベスト更新ね」
「え、Aコースですか……」
様々な形に入り組んだ校舎周りを、Aコースは最も複雑に飛ぶことになる。
隙間のような場所をすり抜けたり、人通りが多い場所を多く通る。
よ、よりによって1番危ないコースとは……。
「ほら、さっさと行くわよ」
僕と瑠音先輩は、中庭にいる。
ここから正面にある校舎の上を抜け、先にある渡り廊下の間をすり抜けなければならないので、ここがスタート地点なのだ。
ふわっ、と柔らかい風を起こし、先輩は軽やかに宙に浮く。
僕もブーツ型の《Space Sonic》のスイッチを入れて、先輩に並んだ。
「平均速度は100kmね。行くわよっ!」
そして、背後に凄まじい風圧を巻き起こし、先輩は一気に加速した。
――……っていうか相変わらず速い!!
「うわ、ま、待ってください!!」
僕も数瞬遅れて、飛び出した。
「礼!! 背筋を伸ばして!! 体は小さく振りなさい!!」
「は、はい!!」
僕の《Space Sonic》はブーツ型。
足裏やふくらはぎから光を噴出させて、先を行く先輩を追う。
渡り廊下をすり抜けた時点で、速度はすでに100km超。
校舎の周りを飛行するには、あまりにも高速すぎる速度だ。
流れて行く景色の中、はっきりと見えているのは、先行する先輩の姿のみ。
「ん……」
その美しさに、僕は息を飲んでしまう。
瑠音先輩の背中から生えているのは、純白の光の翼。
天使の翼のような、白い大翼。
左右に全開すれば全長6mにも及ぶ巨大なそれは、先輩の背負うバックパック型の出す光だ。
先輩が《Space Sonic》を操作する度、光の翼は羽ばたかれ、瑠音先輩の軽く小さい体を高速で前に飛ばす。
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