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僕の口は必死で言葉を紡ぐ
「ぼぐは…うぐっ…あぐづざん…のごど…が…」
あと少しで時間がきてしまう
だから早く
その先を…
「残念だな太一…今のテメェにゃその言葉は早すぎる。」
不意にそう言われて
僕は言葉を飲んだ
同時に
ゆっくりと近付く
亜久津さんの顔
…
「んむっ!?」
…
初めての口付けは
セツナイ涙の味がした
…
「じゃあな太一…約束の12(24)時だ…もう戻らねぇ…学校にも部活にもな…」
顔を離した瞬間
亜久津さんが小さく呟いた
僕にはその横顔が泣いているように見えて
また言葉を詰まらせる
…
去っていく背中
…
動けない僕
…
「づよぐ…なるでず…誰よりも…づよぐ…。」
僕が再び言葉を出すことが出来た頃には
亜久津さんの背中は遠くなっていた
いつか
僕が強くなって二度と泣かなくなったら
その時に言おう
"僕は…亜久津さんのことを…誰よりも…誰よりも…大好きです" って
街灯の下
僕はたたずむ
一瞬だけの夢
24時までの夢
でも僕は…
夢を現実にする
亜久津さんが戻ってくるように
強く、大きくなることを心に誓って…
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