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「好きよ、碑波。私と付き合いなさい」
唐突すぎる告白に、僕は思考が追いつかなかった。
「その沈黙は了承ととっていいのかしら?」
「あ、や、待って!」
彼女のことは知っている。鎌奈川 魅亜と書いて、れんながわみあと読む。大財閥、鎌奈川の一人娘だ。うちの学校でも群を抜く美少女だということでも有名だ。
しかし、彼女は別のことでも有名だ。
「ちなみに今日僕と付き合う事になったらどうするの?」
「は?ん~…そうねぇ…まずは子作りかしら」
ど淫乱なのだ。
もう、みんながヒくくらいに。
「あの…ごめんなさ…」
「理由は?」
さらに困ったことに、彼女は頭がいい。こと口喧嘩では負けたことがない。
「フられるなら、それなりの理由があるんでしょ?悪いけど告白した以上は理由もなしに引き下がれないの」
確かにそうだ。
仮に僕が誰かに告白したとしてもそう思うだろう。
しかし、なんと言えばいいだろう。
「………ないの?」
「あ…えっと…」
「…単純にタイプじゃなかったかしら…」
途端にしょげて俯く鎌奈川さん。慌てて否定する。
「ち、違うよ!鎌奈川さんは綺麗だし、頭もいいし…みんなが見てないところで花瓶の水を変えたりしてる優しい人だって知ってる!……でも……」
「…見てたの」
「あ、うん。カバン忘れて取りに来たときに…」
「くふふ…」
この笑い方も実は有名だったり。
「やっぱりあなたはいい人よ。諦めるなんて、出来ない」
「………」
「でも確かに突然だったわね。私、今さっき衝動的に捕まえて告白したのよ。……あ、好きだったのは前からよ?」
「え…あ…」
「だから、あなたに時間をあげる」
ピンと人差し指を立てて鎌奈川さんは挑発的に笑った。
「1カ月以内に彼女を作りなさい。出来なかったら私と付き合って」
「い、1カ月?」
「そうよ。1カ月。ちょうど1カ月後にはクラス替えじゃない?だから、そのときのあなたの彼女と同じクラスにしてあげる」
うちの学校は鎌奈川家から多額の寄付をうけている。クラス替えくらい好きにできるのだろう。
「…あ、あの…」
「もう、はっきりしないわね。決定!1カ月!もちろん、期限の間も私はアタックするから。また明日ね、碑波」
……大変なことになっちゃった。
期限まであと、三十日
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