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☆
「びっくりした?」
「…そりゃあもう」
依然、腕を組んだまま鎌奈川さんは話しかけてきた。
一応速度はあげたから琴音からはだいぶ離れているのだけど、学校前だから注目を集めまくってるわけで。
「…で、図書委員長の話しじゃないんだよね?」
「んまぁ、マーキングかな?」
「……は?」
「やぁね、かけたりはしないわよ?その……お、おしっ…」
「言わなくていいから!だいたい、恥ずかしいなら言わなきゃいいでしょ!」
なんで生徒が集まる中でこんなことを言わなきゃいけないんだ。耳を澄ませばちらほらと僕たちを見ている人達の声が。
「うわ、鎌奈川の生け贄だ」
「可哀想~」
鎌奈川さんも聞こえたのか、ちらりと周りに視線を送った。
「……ふんっ。私と会話したこともないくせに理解したつもりなんだから嫌になるわ」
「……」
何も言えなかった。
事実、僕が昨日の告白を断ろうとしていた理由の一つだ。
「ところで、篠崎さんとはただの幼なじみなのかしら?」
「ふぇ?」
「ふぇ、じゃないわよ。あの子さっきすごい食いついてきたからびっくりしちゃった」
「あぁ、僕も不思議だったんだ。なんでだろう…」
「ふぅん?まぁいいわ。…えっと、もう一度確認したいんだけど」
「え?なに?」
さっきまでの自信満々な鎌奈川さんはどこへ行ったのやら。
いきなりうつむいてしまった。
「…私のこと、嫌いじゃないのよね…?」
「き、嫌いなんかじゃない!」
不思議とあっさり口から零れた。かわした言葉は少ない。けれど、鎌奈川さんが悪い人じゃないと判断するには十分だった。
「………くふふっ!好きよ、碑波!」
上機嫌になった鎌奈川さんはあろうことか生徒の大半がいるこの場でそんな宣言をした。
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