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二人で微妙な空気が漂う中、医師の準備が終わるのを待っていると、
「な、鈴子」
「何?」
「あんな赤ちゃんの名前なんやけど‥‥」
赤ちゃんの名前‥あ!忘れてたあ!!名前を考える心の余裕なんか全然なかった私は、頭からその事がすっかり消えていた。
「鈴音ってどうかな?」
「鈴音‥鈴音ちゃん?なんで鈴音なの??」
「あ~う‥‥ん」
ちょっと照れたような顔で、歯切れが悪いように、ひろしはこう答え得た。
「鈴子と一緒に頑張ったやろ?お腹の子、でお前の名前を一字とって、一番響きが可愛い音の字を付けて鈴音【すずね】はどうかな?って思って‥」
私と一緒に頑張ったから‥
そこまでひろしが考えてくれているなんて思ってもみなかった。
感動して、思わずひろしの手を握ってしまう。
「鈴音ちゃん‥うん!可愛い名前やと思う」
その言葉にひろしは照れたように頭を掻く。
「おう!俺が考えたんやから、当たり前やろ」
「はいはい、ひろし君は天才やもんね」
「そう!俺天才」
「ハハ、あほやな~ほんまに」
二人の笑い声が陣痛室にこだまする。さきほどの微妙な空気もふっとんで穏やかな雰囲気に包まれた。
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