緊急帝王切開

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勢いよく扉が開く音がして、衣服が乱れ荒い呼吸を繰り返す担当医師がやって来た。 先生の顔を見たとたん、気が張った神経がぷっつりと切れ、目頭に熱い物がこみ上げて来る。 「先生‥‥」 「阪野さん、今すぐ赤ちゃん出すから、ご主人に連絡して、大丈夫!任せておいて」 そう一言残して、すぐに病室を後にする医師。 その言葉に、動揺する気持ちを抑え、すぐにお産キット(お産の為に必要な品々がすべてセットで入っている物)を手に取り、テレホンカードを持って、ナースステーションの真前にある公衆電話へと急ぐ。 一歩一歩、歩いてのにまるで足の感覚がない。 仄かに光る公衆電話にテレホンカードを入れ自宅に電話を架けるが、指が奮えて上手くボタンが押せず、ちっとも電話することが出来ない。 落ち着け‥私‥‥落ち着け 何度も切っては架け、切っては架けを繰り返し、いったん受話器を置いて、深呼吸をする。 ようやく自宅に電話がかかり、コール音が聞こえる。 「‥‥もしもし」 「もしもし、私!あんな今から赤ちゃん出すし、すぐに病院来て!!!!」 捲くし立てるように、ひろしに伝える。 焦って、動揺しているのがわかるのか、ひろしは一言わかったと言って電話を切った。 手か小刻みと奮え、心臓が強い鼓動を刻む。 お産キットを持った手をぎゅっと握り締め、陣痛室へと向かった。
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